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里近く君がなりなば恋ひめやと
もとな思ひし我れぞ悔しき

歌の意味
あなたが里近くに来るようになったならば、こんなに恋しく思うことがあろうかと、わけもなく思っていた私が悔しい。
鑑賞
巻第十七 3939

詞書は前の歌に続き「平群氏女郎、越中守大伴宿祢家持に贈る歌十二首」
 あなたが近くにいるようになれば恋しく思うこともないだろうと、根拠もなく思っていた自分が悔しい、と思いのままにならない恋の心を詠んだ歌である。越中守として都を離れた家持に、平群氏女郎が折々に使いに託して贈った十二首の一つである。近くにいれば逢えると考えていた予想が外れ、かえって恋しさがつのった悔いを述べている。
 作者の平群氏女郎は平群氏の女性で、伝は未詳である。家持と恋の歌を交わした女性の一人である。
 左注に「右の件の十二首の歌は、時々に便使に寄せて来贈す。一度に送るところにあらず」とある。

 初句「里近く」は自分の住む里の近くに、の意である。
 二句「君がなりなば」は、あなたがそうなったならば、の意で、仮定条件である。
 三句「恋ひめやと」の「めや」は反語で、恋しく思うことがあろうか、いやないだろう、と思っていたことを示す。
 四句「もとな思ひし」の「もとな」はわけもなく、むやみに、の意である。本巻の第三千九百四十二首も「もとな咲きつつ」と同じ語を用いている。
 結句「我れぞ悔しき」は「ぞ」と連体形「悔しき」による係り結びで、私こそが悔しい、と強く結んでいる。

もとな:わけもなく。むやみに
作者
平群女郎
出典
万葉集
前の歌
かくのみや我が恋ひ居らむぬばたまの 夜の紐だに解き放けずして
次の歌
万代に心は解けて我が背子が 捻みし手見つつ忍びかねつも