古典和歌stream

万代に心は解けて我が背子が
捻みし手見つつ忍びかねつも

歌の意味
いつまでもと心は打ち解けて、あなたがつねった私の手を見ながら、恋しさをこらえきれないことだ。
鑑賞
巻第十七 3940

詞書は前の歌に続き「平群氏女郎、越中守大伴宿祢家持に贈る歌十二首」
 いつまでもと心を許し合ったあなたがつねった手を見ながら、恋しさをこらえきれない、と逢瀬の記憶をたどる歌である。越中守として都を離れた家持に、平群氏女郎が折々に使いに託して贈った十二首の一つである。親しく交わった時の名残をとどめる自分の手を見つめ、離れてしまった人への思いを抑えかねている。
 作者の平群氏女郎は平群氏の女性で、伝は未詳である。家持と恋の歌を交わした女性の一人である。
 左注に「右の件の十二首の歌は、時々に便使に寄せて来贈す。一度に送るところにあらず」とある。

 初句「万代に」は、いつまでもと、の意で、永遠の契りを思わせる。
 二句「心は解けて」は、心が打ち解けて、の意で、互いに心を許し合ったことを表す。
 三句「我が背子が」は、私の愛する人が、の意で、家持を指す。
 四句「捻みし手見つつ」の「捻む」は指先でつねる意で、逢瀬の際に恋人がつねった手を見つめることをいう。
 結句「忍びかねつも」の「忍ぶ」はこらえる意で、こらえきれないことだ、と詠嘆をこめて結んでいる。

つむ:指先でつねる
しのぶ:こらえる。我慢する
作者
平群女郎
出典
万葉集
前の歌
里近く君がなりなば恋ひめやと もとな思ひし我れぞ悔しき
次の歌
鴬の鳴くくら谷にうちはめて 焼けは死ぬとも君をし待たむ