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鴬の鳴くくら谷にうちはめて
焼けは死ぬとも君をし待たむ

歌の意味
鶯の鳴く暗い谷に身を投げ入れて、焼け死ぬようなことになっても、あなたを待ち続けよう。
鑑賞
巻第十七 3941

詞書は前の歌に続き「平群氏女郎、越中守大伴宿祢家持に贈る歌十二首」
 鶯の鳴く暗い谷に身を投げ入れて焼け死ぬようなことがあっても、あなたを待ち続けよう、と激しい決意を詠んだ歌である。越中守として都を離れた家持に、平群氏女郎が折々に使いに託して贈った十二首の一つである。どのような苦しみに遭っても待ち続けるという、強い恋心を極端な表現で示している。表現の背景については諸説があり、難解な歌とされる。
 作者の平群氏女郎は平群氏の女性で、伝は未詳である。家持と恋の歌を交わした女性の一人である。
 左注に「右の件の十二首の歌は、時々に便使に寄せて来贈す。一度に送るところにあらず」とある。

 初句「鴬の」は鶯の鳴く、の意で、春の谷を思わせる。
 二句「鳴くくら谷に」の「くら谷」は暗く深い谷のことである。
 三句「うちはめて」は、身を投げ入れて、の意である。
 四句「焼けは死ぬとも」は、焼け死ぬことがあっても、の意で、「とも」は逆接の仮定条件である。
 結句「君をし待たむ」の「し」は強意の副助詞、「む」は意志で、あなたを待ち続けよう、と強く言い切る。次歌の第三千九百四十二首は「待つ」を掛ける「松の花」で歌い起こし、待つ心が続く。

くらたに:暗く深い谷
はむ:入れる。投げ入れる
作者
平群女郎
出典
万葉集
前の歌
万代に心は解けて我が背子が 捻みし手見つつ忍びかねつも
次の歌
松の花花数にしも我が背子が 思へらなくにもとな咲きつつ