天離る鄙に月経ぬしかれども
結ひてし紐を解きも開けなくに
- 歌の意味
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都から遠く離れた鄙の地で月日が過ぎた。けれども、妻が結んでくれた紐を解き開けたことはないのに。
- 鑑賞
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巻第十七 3948
詞書は前の歌に続き「八月七日の夜に、守大伴宿祢家持の舘に集ひて宴する歌」
都を遠く離れた鄙で月日がたったが、別れの時に結んだ紐はまだ解いていない、と都の妻への変わらぬ思いを述べた歌である。天平十八年(746)八月七日の夜、越中に着任して間もない守家持の館に、国府の官人たちが集って催した宴の歌の一つである。着任から月を経て、都に残した妻を思う心を、紐を解かないという貞節の表現によって示している。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右の二首は守大伴宿祢家持の作」とある。
初句「天離る」は、天のように遠く離れた意で、鄙にかかる枕詞である。次歌の第三千九百四十九首も同じ枕詞で歌い起こしている。
二句「鄙に月経ぬ」は、都から遠い地で月日が過ぎた、の意で、ここで句切れとなる。
三句「しかれども」は、そうではあるけれども、と逆接で下に続ける。
四句「結ひてし紐を」は別れに際して結んだ下紐のことで、再会まで解かないという誓いのしるしである。本巻の第三千九百五十首にも「結ひてし紐を」と同じ句が見える。
結句「解きも開けなくに」は、解き開けてもいないのに、の意で、他の女性に心を移していないことを表している。
あまざかる:鄙などにかかる枕詞
ひな:都から遠く離れた地方
ひも:衣の下紐。別れに際して結び、再会まで解かないとされた
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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今朝の朝明秋風寒し遠つ人 雁が来鳴かむ時近みかも
- 次の歌
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天離る鄙にある我れをうたがたも 紐解き放けて思ほすらめや