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馬並めていざ打ち行かな渋谿の
清き磯廻に寄する波見に

歌の意味
馬を並べて、さあ鞭打って出かけよう、渋谿の清らかな磯辺に寄せる波を見に。
鑑賞
巻第十七 3954

詞書は前の歌に続き「八月七日の夜に、守大伴宿祢家持の舘に集ひて宴する歌」
 馬を並べて、さあ渋谿の清らかな磯に寄せる波を見に出かけよう、と宴の仲間を遊覧に誘う歌である。天平十八年(746)八月七日の夜、越中に着任して間もない守家持の館に、国府の官人たちが集って催した宴の歌の一つである。越中の名勝である渋谿の海辺へ皆で出かけようと呼びかけ、新任の守として土地の景を楽しもうとする心が表れている。
 作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
 左注に「右の二首は守大伴宿祢家持」とある。

 初句「馬並めて」は、馬を並べて、の意で、仲間と連れ立つさまを表す。
 二句「いざ打ち行かな」の「打ち」は馬に鞭を当てる意、「な」は意志や勧誘を表す終助詞で、さあ出かけよう、と誘っている。ここで句切れとなる。
 三句「渋谿の」の渋谿は現在の富山県高岡市の雨晴海岸付近とされる名勝である。本巻の第三千九百八十六首でも「渋谿の崎の荒磯に寄する波」と同じ景が詠まれている。
 四句「清き磯廻に」の「磯廻」は「いそみ」と読み、磯の入り組んだあたりのことである。
 結句「寄する波見に」は、寄せる波を見に、の意で、出かける目的を倒置によって後から示している。

いそみ:磯の入り組んだあたり。磯辺
しぶたに:越中国の地名。現在の高岡市雨晴海岸付近
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
雁がねは使ひに来むと騒くらむ 秋風寒みその川の上に
次の歌
ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥 二上山に月かたぶきぬ