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ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥
二上山に月かたぶきぬ

歌の意味
夜はすっかり更けたらしい。二上山に月が傾いた。
鑑賞
巻第十七 3955

詞書は前の歌に続き「八月七日の夜に、守大伴宿祢家持の舘に集ひて宴する歌」
 二上山に月が傾いたので夜はもう更けたらしい、と宴の終わりを告げる歌である。天平十八年(746)八月七日の夜、越中に着任して間もない守家持の館に、国府の官人たちが集って催した宴の歌の一つである。国府の北にそびえる二上山にかかる月を見て時の経過を知り、楽しい宴が終わりに近づいたことを静かに詠んでいる。
 作者の土師道良は越中国の史生(国司の下級の書記官)を務めた官人で、伝は未詳である。
 左注に「右の一首は史生土師宿祢道良」とある。

 初句「ぬばたまの」は夜にかかる枕詞である。
 二句「夜は更けぬらし」の「らし」は根拠に基づく推定の助動詞で、夜は更けたらしい、の意である。ここで句切れとなり、根拠を下の句で示す。本巻の第三千九百首の「舟乗りすらし」も、根拠を下の句に示す同じ構成をとっている。
 三句「玉櫛笥」は美しい櫛箱の意で、その「蓋」から「二上」にかかる枕詞である。
 四句「二上山に」の二上山は現在の富山県高岡市にある山で、越中国府の北にそびえている。
 結句「月かたぶきぬ」は、月が西に傾いた、の意で、夜更けの根拠となる景である。宴の歌の最後に置かれ、月の傾きによって宴の終わりを告げている。

たまくしげ:二上、明く、開くなどにかかる枕詞
ふたがみやま:越中国の山。現在の高岡市にある
作者
土師道良
出典
万葉集
前の歌
馬並めていざ打ち行かな渋谿の 清き磯廻に寄する波見に
次の歌
奈呉の海人の釣する舟は今こそば 舟棚打ちてあへて漕ぎ出め