ま幸くと言ひてしものを白雲に
立ちたなびくと聞けば悲しも
- 歌の意味
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無事でいてくれと言い交わしたのに、白雲となって立ちたなびいていると聞くと悲しいことだ。
- 鑑賞
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巻第十七 3958
詞書「長逝せる弟を哀傷する歌一首并せて短歌」の反歌
互いに無事でいようと言い交わしたのに、弟が白雲となってたなびいていると聞くと悲しい、と弟の死を嘆く歌である。天平十八年(746)九月二十五日、越中にあった家持が、都で弟の書持が亡くなったことを遠く伝え聞いて詠んだ長歌に添えた反歌である。長歌では、越中へ下る家持を泉川の河原まで見送った弟と「ま幸くて我れ帰り来む」と語り合って別れたこと、花草を愛した弟が佐保山で火葬され、その煙が白雲となってたなびいたと知らされたことが詠まれている。別れの言葉と火葬の知らせとを対比し、再会を約した弟を失った悲しみを凝縮している。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右、天平十八年秋九月二十五日に、越中守大伴宿祢家持、遥かに弟の喪を聞き、感傷して作る」とある。
初句「ま幸くと」の「ま」は接頭語、「幸く」は無事で、の意である。長歌の「ま幸くて我れ帰り来む」を受け、別れの際の言葉を思い起こしている。
二句「言ひてしものを」は、言い交わしたのに、の意で、「ものを」は逆接の詠嘆を表す。
三句「白雲に」は、白雲となって、の意で、火葬の煙が雲となってたなびくことをいう。
四句「立ちたなびくと」は長歌の結びの「白雲に立ちたなびくと我れに告げつる」をそのまま受けた句である。
結句「聞けば悲しも」は、聞くと悲しいことだ、の意で、「も」は詠嘆である。遠く離れて伝え聞くしかない身の悲しみを結んでいる。
まさきく:無事で。つつがなく
たなびく:雲や煙が横に長く漂う
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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奈呉の海人の釣する舟は今こそば 舟棚打ちてあへて漕ぎ出め
- 次の歌
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かからむとかねて知りせば越の海の 荒磯の波も見せましものを