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山川のそきへを遠みはしきよし
妹を相見ずかくや嘆かむ

歌の意味
山や川の隔てる果てが遠いので、いとしい妻にも逢えないまま、こうして嘆き続けるのだろうか。
鑑賞
巻第十七 3964

詞書は前の歌に続き「忽ちに枉疾に沈み、ほとほとに泉路に臨む。よりて歌詞を作り、もちて悲緒を申ぶる一首并せて短歌」の反歌
 山や川に隔てられた遠い地にいるので、いとしい妻にも逢えないまま、こうして嘆き続けるのだろうか、と病床で妻を恋う歌である。天平十九年(747)二月二十日、越中の守の館で重い病に臥した家持が、死をも思うほどの悲しみを述べた長歌に添えた反歌である。長歌では、大君の命によって越中に下り、まだ年月も経たないのに病に伏し、都の母や妻、幼い子らを思いながら逢うすべもない嘆きが詠まれている。死をも思う病のなかで、遠く都にいる妻に逢えない悲しみを訴えている。
 作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
 左注に「右、天平十九年春二月二十日に、越中国の守の館にして病に臥して悲傷し、聊かにこの歌を作る」とある。

 初句「山川の」は、山や川の、の意で、都と越中との間を隔てるものを表す。
 二句「そきへを遠み」の「そきへ」は遠く離れた果て、「遠み」は遠いので、というミ語法である。
 三句「はしきよし」は、いとしい、の意で、妹にかかる語である。
 四句「妹を相見ず」は、妻に逢わないで、の意である。
 結句「かくや嘆かむ」の「や」は疑問の係助詞で、推量の「む」の連体形と係り結びをなす。こうして嘆き続けるのだろうか、と先の見えない嘆きを結んでいる。

そきへ:遠く離れた果て
はしきよし:いとしい。親しみをこめた呼びかけの語
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
世間は数なきものか春花の 散りのまがひに死ぬべき思へば
次の歌
春の花今は盛りににほふらむ 折りてかざさむ手力もがも