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山吹の茂み飛び潜く鴬の
声を聞くらむ君は羨しも

歌の意味
山吹の茂みを飛びくぐる鶯の声を聞いているであろうあなたがうらやましい。
鑑賞
巻第十七 3971

詞書は前の歌に続き「更に贈る歌一首并せて短歌」の反歌。長歌の前には「含弘の徳、恩を蓬体に垂れ、不貲の思、陋心を報慰す」に始まる漢文の書簡がある
 山吹の茂みを飛びくぐって鳴く鶯の声を聞いているであろうあなたがうらやましい、と病床から池主をうらやむ歌である。天平十九年(747)三月三日、池主の慰めの歌に答えて、病の癒えない家持が贈った長歌に添えた反歌である。書簡では、幼い時に遊芸の庭に親しまず、若い時に「山柿の門」に学ばなかったので、歌を作る言葉に乏しいと謙遜している。この「山柿」は柿本人麻呂と山部赤人(一説に山上憶良)を指すとされ、先人の歌人を仰ぐ意識を示す早い例として知られる。長歌では、春の花の盛りに友と手折りかざすこともなく、鶯の声も聞かずに季節を空しく過ごした嘆きと、自分を思ってくれる池主の心のうるわしさに夜通し眠れず恋い続けていることが詠まれている。池主が鶯と山吹を詠んで励ましたのに対し、外に出られない身から、春を楽しめる池主をうらやんでいる。
 作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
 左注に「三月三日 大伴宿祢家持」とある。

 初句「山吹の」は池主の第三千九百六十八首の「来鳴く山吹」を受けている。
 二句「茂み飛び潜く」は茂みの中を飛びくぐる意で、長歌の「春の野の茂み飛び潜く鴬」と同じ表現である。
 三句「鴬の」は第三千九百六十八首の初句と同じ語で、池主の歌の取り合わせをそのまま受けている。
 四句「声を聞くらむ」の「らむ」は現在推量で、聞いているであろう、と池主の様子を思いやっている。
 結句「君は羨しも」の「羨し」は「ともし」と読み、うらやましい、の意で、「も」は詠嘆である。

ともし:うらやましい
とびくく:飛んでくぐり抜ける
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山桜花一目だに 君とし見てば我れ恋ひめやも
次の歌
出で立たむ力をなみと隠り居て 君に恋ふるに心どもなし