出で立たむ力をなみと隠り居て
君に恋ふるに心どもなし
- 歌の意味
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外へ出かける力がないので、家にこもってあなたを恋い慕っていると、心の張りもなくなってしまう。
- 鑑賞
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巻第十七 3972
詞書は前の歌に続き「更に贈る歌一首并せて短歌」の反歌。長歌の前には「含弘の徳、恩を蓬体に垂れ、不貲の思、陋心を報慰す」に始まる漢文の書簡がある
外へ出かける力もないので家にこもり、あなたを恋い慕っていると気力も失せてしまう、と病の身の心細さを述べた歌である。天平十九年(747)三月三日、池主の慰めの歌に答えて、病の癒えない家持が贈った長歌に添えた反歌である。書簡では、幼い時に遊芸の庭に親しまず、若い時に「山柿の門」に学ばなかったので、歌を作る言葉に乏しいと謙遜している。この「山柿」は柿本人麻呂と山部赤人(一説に山上憶良)を指すとされ、先人の歌人を仰ぐ意識を示す早い例として知られる。長歌では、春の花の盛りに友と手折りかざすこともなく、鶯の声も聞かずに季節を空しく過ごした嘆きと、自分を思ってくれる池主の心のうるわしさに夜通し眠れず恋い続けていることが詠まれている。反歌三首の結びとして、病のため外に出られず池主に逢えない嘆きをまとめている。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「三月三日 大伴宿祢家持」とある。
初句「出で立たむ」は、外へ出かけよう、の意である。
二句「力をなみと」は、力がないので、というミ語法で、第三千九百六十五首の「手力もがも」と同じく病の身の弱さを表す。
三句「隠り居て」は家にこもっていて、の意で、長歌の「隠り居て思ひ嘆かひ」と同じ語である。
四句「君に恋ふるに」は、あなたを恋い慕うと、の意である。
結句「心どもなし」の「心ど」はしっかりした心、気力の意で、気力もなくなってしまう、と結んでいる。
こころど:しっかりした心。気力
こもりゐる:家にこもっている
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山吹の茂み飛び潜く鴬の 声を聞くらむ君は羨しも
- 次の歌
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山吹は日に日に咲きぬうるはしと 我が思ふ君はしくしく思ほゆ