咲けりとも知らずしあらば黙もあらむ
この山吹を見せつつもとな
- 歌の意味
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咲いているとも知らずにいたならば、黙ってもいられようが、この山吹をむやみに見せてくれて。
- 鑑賞
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巻第十七 3976
詞書「短歌二首」
山吹が咲いていると知らずにいれば平気でいられたものを、むやみに見せてくれるので心が騒ぐ、と池主に恨み言めかして答えた歌である。天平十九年(747)三月五日、池主の長歌と反歌を受けて、病に臥した家持が詠んだ短歌二首の一つである。見に行けない山吹を歌で見せられ、かえって恋しさを募らされたと甘えるように訴え、親しい間柄の戯れを感じさせる。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「三月五日 大伴宿祢家持 病に臥して作る」とある。
初句「咲けりとも」は、咲いているとも、の意で、「り」は存続の助動詞である。
二句「知らずしあらば」の「し」は強意、未然形に「ば」が付いた仮定で、知らないでいたならば、の意である。
三句「黙もあらむ」の「黙」は「もだ」と読み、黙っていること、何もしないでいることで、平気でいられもしよう、の意である。ここで句切れとなる。
四句「この山吹を」は池主の第三千九百七十四首の「山吹は日に日に咲きぬ」を受けている。
結句「見せつつもとな」の「もとな」はむやみに、わけもなく、の意で、見せてくれて心が乱れる、と言いさして余情を残している。
もだ:黙っていること。何もしないでいること
もとな:むやみに。わけもなく
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が背子に恋ひすべながり葦垣の 外に嘆かふ我れし悲しも
- 次の歌
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葦垣の外にも君が寄り立たし 恋ひけれこそば夢に見えけれ