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ぬばたまの月に向ひて霍公鳥
鳴く音遥けし里遠みかも

歌の意味
夜の月に向かって霍公鳥の鳴く声が遥かに聞こえる。里が遠いからだろうか。
鑑賞
巻第十七 3988

詞書「四月十六日の夜裏に、遥かに霍公鳥の喧くを聞きて懐を述ぶる歌一首」
 夜の月に向かって鳴く霍公鳥の声が遥かに聞こえる、里が遠いからだろうか、と待ちわびた霍公鳥の声を聞いた感慨を詠んだ歌である。詞書によれば、天平十九年(747)四月十六日の夜、遥かに霍公鳥の鳴くのを聞いて思いを述べたものである。立夏を過ぎても鳴かないことを恨んだ第三千九百八十三首と第三千九百八十四首から半月余り、ようやく聞いた声は遠くかすかで、月夜の静けさのなかに余韻を残している。
 作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
 左注に「右、大伴宿祢家持作る」とある。

 初句「ぬばたまの」は夜や黒、月などにかかる枕詞で、ここでは夜の月を導いている。
 二句「月に向ひて」は月に向かって、の意で、十六日の夜の満月に近い月を思わせる。
 三句「霍公鳥」は待ちわびた鳥で、本巻の第三千九百八十三首で「何か来鳴かぬ」と恨んだ霍公鳥である。
 四句「鳴く音遥けし」は鳴く声が遥かに遠く聞こえる、の意で、ここで句切れとなる。
 結句「里遠みかも」は、里が遠いからだろうか、というミ語法に疑問の「かも」を添えたもので、声の遠さの理由を推し量っている。

はるけし:遥かに遠い
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
玉櫛笥二上山に鳴く鳥の 声の恋しき時は来にけり
次の歌
奈呉の海の沖つ白波しくしくに 思ほえむかも立ち別れなば