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玉桙の道の神たち賄はせむ
我が思ふ君をなつかしみせよ

歌の意味
道の神々よ、贈り物を差し上げよう。私の思うあの方を、いつくしんで守ってほしい。
鑑賞
巻第十七 4009

詞書「忽ちに京に入りて懐を述ぶる作を見るに、生別の悲しび、腸を断つこと万廻、怨緒禁め難し。聊かに所心を奉る一首并せて二絶」の一絶
 道の神々に贈り物をささげるので、私の大切なあの方をいつくしんでお守りください、と旅立つ家持の無事を祈った歌である。天平十九年(747)五月二日、上京を前にした家持の第四千六首と第四千七首に答えて、池主が贈った長歌に添えた短歌二首の一つである。長歌では、奈良を離れた鄙の地でもあなたを見ていれば心を晴らせたのに、大君の命で旅立てば、残る私が悲しいのか、旅行くあなたが恋しく思うのか、と嘆き、言葉に出すのも忌まわしいので砺波山の手向けの神に幣を奉り、あなたが無事に巡り帰って、月が改まったらなでしこの花の盛りに逢わせてくださいと祈っている。長歌の手向けの神への祈りを受け、道中の神々に家持の加護を願っている。
 作者の大伴池主は越中掾として守の家持を補佐した官人である。家持と同族で漢詩文にも通じ、越中時代の家持と多くの歌や書簡を交わした。
 左注に「右、大伴宿祢池主の報へ贈る和へ歌(五月二日)」とある。

 初句「玉桙の」は道にかかる枕詞である。
 二句「道の神たち」は道中を守る神々で、旅人は峠などでこれらの神に幣を手向けて無事を祈った。坂上郎女が越中の国つ神に家持の加護を祈った第三千九百三十首と同じく、旅の神への祈りの歌である。
 三句「賄はせむ」の「まひ」は神への贈り物で、贈り物をいたしましょう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「我が思ふ君を」は、私が大切に思うあの方を、の意で、家持を指す。
 結句「なつかしみせよ」は、親しみいつくしんでください、の意で、神々に家持を大切に扱ってほしいと願っている。

まひ:神へのささげ物。贈り物
みちのかみ:道中の安全を守る神
作者
大伴池主
出典
万葉集
前の歌
我が背子は玉にもがもな霍公鳥 声にあへ貫き手に巻きて行かむ
次の歌
うら恋し我が背の君はなでしこが 花にもがもな朝な朝な見む