矢形尾の鷹を手に据ゑ三島野に
猟らぬ日まねく月ぞ経にける
- 歌の意味
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矢形尾の鷹を手に据えて三島野で狩りをしない日が重なり、もう一月も経ってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十七 4012
詞書「放逸せる鷹を思ひ、夢に見て感悦して作る歌一首并せて短歌」の反歌
矢形尾の鷹を手に据えて三島野で狩りをすることもない日が重なり、一月が過ぎてしまった、と逃げた鷹を惜しむ歌である。天平十九年(747)九月二十六日、逃げた鷹を思い、夢のお告げを得て喜んだ家持が詠んだ長歌に添えた反歌である。左注によれば、射水郡古江村で捕らえた蒼鷹は姿が美しく、雉を捕ることに抜きん出ていたが、鷹飼の山田史君麻呂が調教の時節を誤り、狩りの最中に風に乗って高く飛び去り、雲に隠れて呼んでも戻らなかった。そこで網を張り、神々に幣を奉って祈っていたところ、夢に娘子が現れ、あの鷹は遠からず手に入るから思い悩むなと告げたので、目覚めて喜び、恨みを払う歌を作ったという。愛した鷹を失い、狩りに出ることもないまま過ぎた日々の空しさを述べている。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注は鷹が逃げた経緯と夢のお告げを記し、末尾に「守大伴宿祢家持(九月二十六日作る)」とある。
初句「矢形尾の」は尾羽の斑が矢の形をしていることで、長歌の「矢形尾の我が大黒に」を受けている。大黒は逃げた蒼鷹の名である。
二句「鷹を手に据ゑ」は、鷹を拳に止まらせて、の意で、鷹狩りの姿を表している。
三句「三島野に」の三島野は射水郡の野で、長歌にも鷹が「三島野をそがひに見つつ」飛び去ったと詠まれている。
四句「猟らぬ日まねく」の「まねし」は数が多い意で、狩りをしない日が重なって、の意である。
結句「月ぞ経にける」は「ぞ」と連体形「ける」による係り結びで、一月が過ぎてしまったことだ、と嘆いている。
やかたを:尾羽の斑が矢の形をしているもの
まねし:数が多い。度重なる
みしまの:越中国射水郡の野
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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うら恋し我が背の君はなでしこが 花にもがもな朝な朝な見む
- 次の歌
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二上のをてもこのもに網さして 我が待つ鷹を夢に告げつも