松反りしひにてあれかもさ山田の
翁がその日に求めあはずけむ
- 歌の意味
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老いぼれていたからだろうか、山田の翁がその日に鷹を探し求めても見つけられなかったのは。
- 鑑賞
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巻第十七 4014
詞書は前の歌に続き「放逸せる鷹を思ひ、夢に見て感悦して作る歌一首并せて短歌」の反歌
山田の翁がその日に鷹を探しても見つけられなかったのは、老いぼれていたからだろうか、と鷹を逃がした鷹飼をなじった歌である。天平十九年(747)九月二十六日、逃げた鷹を思い、夢のお告げを得て喜んだ家持が詠んだ長歌に添えた反歌である。左注によれば、射水郡古江村で捕らえた蒼鷹は姿が美しく、雉を捕ることに抜きん出ていたが、鷹飼の山田史君麻呂が調教の時節を誤り、狩りの最中に風に乗って高く飛び去り、雲に隠れて呼んでも戻らなかった。そこで網を張り、神々に幣を奉って祈っていたところ、夢に娘子が現れ、あの鷹は遠からず手に入るから思い悩むなと告げたので、目覚めて喜び、恨みを払う歌を作ったという。長歌でも鷹飼を「狂れたる醜つ翁」と罵っており、本歌はその恨みを戯れ交じりに重ねている。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注は鷹が逃げた経緯と夢のお告げを記し、末尾に「守大伴宿祢家持(九月二十六日作る)」とある。
初句「松反り」は「しひ」にかかる枕詞であるが、かかり方は未詳で、難解な語とされる。
二句「しひにてあれかも」の「しふ」は心身の働きが鈍る、ぼける意で、「かも」は疑問の係助詞として結句の「けむ」と係り結びをなす。老いぼれていたからだろうか、の意である。
三句「さ山田の」の「さ」は接頭語で、鷹飼の山田史君麻呂の名を山田の意に掛けている。
四句「翁がその日に」の「翁」は年寄りの意で、長歌の「醜つ翁」を受けている。
結句「求めあはずけむ」は、探し求めて行き会えなかったのだろう、の意で、「けむ」は過去推量である。鷹を見つけられなかった鷹飼の失態をなじっている。
まつがへり:しひにかかる枕詞。語義未詳
しふ:心身の働きが鈍る。ぼける
をぢ:年寄りの男。翁
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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二上のをてもこのもに網さして 我が待つ鷹を夢に告げつも
- 次の歌
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心には緩ふことなく須加の山 すかなくのみや恋ひわたりなむ