婦負の野のすすき押しなべ降る雪に
宿借る今日し悲しく思ほゆ
- 歌の意味
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婦負の野のすすきを押し伏せて降る雪のなか、宿を借りる今日は悲しく思われる。
- 鑑賞
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巻第十七 4016
詞書「高市連黒人の歌一首(年月審らかならず)」
婦負の野のすすきを押し伏せて降る雪のなか、旅の宿を借りる今日は悲しく思われる、と旅の心細さを詠んだ歌である。詞書によれば年月はわからない。越中の婦負の野を詠むことから、黒人が越中を旅した折の歌とも見られるが、詳しいことは知られない。左注によれば、三国五百国が伝え誦した歌で、越中にゆかりのある古歌として家持の歌日記に書き留められたものである。
作者の高市黒人は持統朝から文武朝のころの歌人で、旅の歌に優れた人物である。
左注に「右、この歌を伝へ誦するは三国真人五百国これなり」とある。
初句「婦負の野の」の婦負は越中国の郡名で、現在の富山市付近にあたる。字余り(六音)である。本巻の第四千二十二首や第四千二十三首にも、家持が巡行した婦負郡の地名が詠まれている。
二句「すすき押しなべ」は、すすきを押し伏せて、の意で、雪の重さを表している。
三句「降る雪に」は、降る雪のなかで、の意である。
四句「宿借る今日し」は旅先で宿を借りることで、「し」は強意の副助詞である。
結句「悲しく思ほゆ」は、悲しく思われる、の意で、雪の野で宿を求める旅人の心細さを結んでいる。
めひ:越中国の郡名。現在の富山市付近
おしなぶ:押し伏せて靡かせる
- 作者
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高市黒人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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心には緩ふことなく須加の山 すかなくのみや恋ひわたりなむ
- 次の歌
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あゆの風いたく吹くらし奈呉の海人の 釣する小船漕ぎ隠る見ゆ