妹に逢はず久しくなりぬ饒石川
清き瀬ごとに水占延へてな
- 歌の意味
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妻に逢わないで久しくなった。饒石川の清らかな瀬ごとに水占をして、妻の様子を占ってみよう。
- 鑑賞
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巻第十七 4028
詞書「鳳至郡にして饒石川を渡る時に作る歌一首」
妻に逢わないまま久しくなった、饒石川の清らかな瀬ごとに水占をしてみよう、と都の妻を思って占いを試みようとする歌である。天平二十年(748)の春、出挙のために越中の諸郡を巡行した家持が、その時その所で目にしたものを詠んだ歌の一つである。出挙は春に稲を貸し付け、秋の収穫後に利息とともに返させる制度で、国司はそのために管内を巡った。遠い能登の川を渡りながら、都の妻の安否や再会の日を占いたいという思いを述べている。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
当時の越中国は能登の四郡をも管轄しており、家持の巡行は能登半島にまで及んでいる。
初句「妹に逢はず」は、妻に逢わないで、の意で、都に残した妻を指す。
二句「久しくなりぬ」は、久しくなった、の意で、ここで句切れとなる。
三句「饒石川」は鳳至郡を流れる川で、現在の石川県輪島市門前町の仁岸川にあたるとされる。
四句「清き瀬ごとに」は清らかな瀬のそれぞれに、の意で、本巻の第四千二十三首の「早き瀬ごとに」と同じく、瀬を一つ一つたどる言い方である。
結句「水占延へてな」の「水占」は川の流れによって吉凶を占うこと、「延ふ」は縄などを張り渡す意、「な」は意志の終助詞で、水占をしてみよう、の意である。
みなうら:川の流れによって吉凶を占うこと
はふ:縄などを長く張り渡す
にぎしがは:能登国鳳至郡の川
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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香島より熊来をさして漕ぐ船の 楫取る間なく都し思ほゆ
- 次の歌
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珠洲の海に朝開きして漕ぎ来れば 長浜の浦に月照りにけり