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中臣の太祝詞言言ひ祓へ
贖ふ命も誰がために汝れ

歌の意味
中臣氏の唱える立派な祝詞の言葉を唱えて罪穢れを祓い、贖い物をささげて長い命を祈るのも、いったい誰のためか。あなたのためなのだ。
鑑賞
巻第十七 4031

詞書「造酒歌一首」
 中臣氏の唱える太祝詞を唱えて祓い清め、贖い物をささげて命を祈るのも、ほかならぬあなたのためなのだ、と神事に寄せて相手の長寿を願った歌である。題詞は酒を造る時の歌であることを示しており、神に供える酒造りの神事にかかわって詠まれたものと見られる。祝詞の言葉を用いた荘重な詠みぶりの歌で、本巻はこの歌で閉じられる。
 作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
 左注に「右、大伴宿祢家持作る」とある。

 初句「中臣の」は朝廷の祭祀を司った中臣氏のことである。
 二句「太祝詞言」は立派な祝詞の言葉の意で、「太」は美称である。
 三句「言ひ祓へ」は、祝詞を唱えて罪穢れを祓い清める、の意である。
 四句「贖ふ命も」の「贖ふ」は物をささげて罪を償い、災いを避けることで、それによって命の長いことを祈ることをいう。
 結句「誰がために汝れ」は、誰のためか、あなたのためだ、の意で、問いかけと答えを一句に収めた力強い結びである。本巻は巻頭の第三千八百九十首の筑紫からの海路の旅の歌に始まり、越中での家持の日々をたどって、この神事にかかわる言祝ぎの歌で閉じられている。

ふとのりとごと:立派な祝詞の言葉
あかふ:物をささげて罪を償い、災いを避ける
なかとみ:朝廷の祭祀を司った氏族
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
鴬は今は鳴かむと片待てば 霞たなびき月は経につつ
次の歌
奈呉の海に舟しまし貸せ沖に出でて 波立ち来やと見て帰り来む