音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を
見ずは上らじ年は経ぬとも
- 歌の意味
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噂にばかり聞いて、まだこの目で見たことのない布勢の浦を、見ないうちは都へ上るまい。たとえ年が過ぎてしまっても。
- 鑑賞
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巻第十八 4039
詞書は前の歌に続き「時に、明日布勢の水海に遊覧せむと期し、仍りて懐を述べて各作る歌」
評判にだけ聞いてまだ見たことのない布勢の浦を、見るまでは都へ帰るまい、たとえ年が過ぎようともと詠む。大げさな決意を述べることで、布勢の浦の名高さと、それを見せようとする主人の厚意とをたたえている。
作者の田辺福麻呂は造酒司の令史で、左大臣橘諸兄の使いとして越中を訪れた。宮廷を讃える長歌を得意とした万葉集後期の歌人である。
初句「音のみに」「音」は評判、噂の意。耳に聞くだけで、という限定を示す。
二句「聞きて目に見ぬ」耳と目を対比させ、まだ実際に見ていないもどかしさを表す。
三句「布勢の浦を」前歌に続いて布勢の浦を名指し、一連の主題を保つ。
四句「見ずは上らじ」「上る」は都へ上ること。「じ」は打消しの意志で、見ないうちは都へ帰るまいと決意する。ここで四句切れとなり、倒置の形で結句が添えられる。
結句「年は経ぬとも」「とも」は逆接仮定で、たとえ年が過ぎようとも、の意。本巻の第四千三十三首の「年は経にける」と同じく年月の経過を詠むが、そちらが過ぎた年を振り返るのに対し、ここでは先の年月を言い、対照をなしている。
おと:評判。うわさ
のぼる:都へ行く
- 作者
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田辺福麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の 浦を行きつつ玉も拾はむ
- 次の歌
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布勢の浦を行きてし見てばももしきの 大宮人に語り継ぎてむ