垂姫の浦を漕ぐ舟梶間にも
奈良の我家を忘れて思へや
- 歌の意味
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垂姫の浦を漕ぐ舟の、梶をひと掻きするほどのわずかな間でも、奈良の我が家を忘れて思うことがあろうか、いや片時も忘れはしない。
- 鑑賞
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巻第十八 4048
詞書は前の歌に続き「水海に至りて遊覧する時に、各懐を述べて作る歌」
垂姫の浦を漕ぐ舟の梶のひと掻きほどのわずかな間も、奈良の我が家を忘れることはないと詠む。皆が遊覧を楽しむさなかに、遠い都の家を思う心を述べたもので、前歌の「楽しく遊べ」という明るい呼びかけとは対照的な、国守の望郷の思いが表れている。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
初句「垂姫の」前歌と同じ初句で始め、垂姫を詠む三首の三首目となる。
二句「浦を漕ぐ舟」前歌の「浦を漕ぎつつ」を受ける。初句からここまでが序詞で、舟の梶から三句の「梶間」を導く。
三句「梶間にも」梶を漕ぐひと掻きの間、すなわちほんのわずかな時間の意である。
四句「奈良の我家を」都の自宅を指し、目の前の越中の浦と遠い奈良とを対比させている。
結句「忘れて思へや」「や」は反語で、忘れて思うことがあろうか、いやないの意となる。前歌の「楽しく遊べ」が今日の遊びを勧めるのに対し、ここでは遊びのさなかにも都を忘れない心を詠み、一連に陰影を与えている。
かぢま:梶をひと掻きする間。ほんのわずかな時間
わぎへ:我が家
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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垂姫の浦を漕ぎつつ今日の日は 楽しく遊べ言ひ継ぎにせむ
- 次の歌
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おろかにぞ我れは思ひし乎布の浦の 荒礒の廻り見れど飽かずけり