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玉敷かず君が悔いて言ふ堀江には
玉敷き満てて継ぎて通はむ

歌の意味
玉を敷かなかったとあなたが悔やんで言う堀江には、玉を敷き満たして、これからも続けて通おう。
鑑賞
巻第十八 4057

詞書は前の歌に続き「太上皇の難波宮に御在しし時の歌七首[清足姫天皇なり]」「御製の歌一首[和ふ]」
 玉を敷かなかったと左大臣が悔やむ堀江には、私が玉を敷き満たして、これからも続けて通おうと答えた御製である。諸兄の謙遜を温かく受け止め、この地への再訪を約束することで、もてなしへの満足と臣下への信頼を示している。
 作者の元正天皇は草壁皇子の娘で、天武天皇の孫にあたる女帝である。譲位後は太上天皇として、聖武天皇の代にも重んじられた。
 左注に「右の二首の件の歌は、御船江を泝りて遊宴せし日に、左大臣の奏せると御製となり」とある。原文には四句について「或いは云ふ、玉扱き敷きて」という異伝の注記があるが、歌の本文ではないため除き、本文の「玉敷き満てて」に従った。

 初句「玉敷かず」前歌の「玉敷かましを」を受け、玉を敷かなかったことをいう。
 二句「君が悔いて言ふ」「君」は左大臣の橘諸兄を指す。臣下の謙遜の言葉を、悔いて言うと受け止めている。
 三句「堀江には」前歌の初句「堀江には」をそのまま用い、同じ場所への答えであることを示す。
 四句「玉敷き満てて」前歌の「玉敷かましを」を反転させ、玉を敷かなかったという悔いに、敷き満たそうと答える。敷かなかったと敷き満てるという、対をなす構図になっている。
 結句「継ぎて通はむ」「継ぎて」は引き続いての意、「む」は意志の助動詞である。これからも絶えず通おうと、再訪を約束して結ぶ。

くゆ:悔いる。後悔する
みつ:満たす。いっぱいにする
作者
元正天皇
出典
万葉集
前の歌
堀江には玉敷かましを大君を 御船漕がむとかねて知りせば
次の歌
橘のとをの橘八つ代にも 我れは忘れじこの橘を