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桜花今ぞ盛りと人は言へど
我れは寂しも君としあらねば

歌の意味
桜の花は今が盛りだと人は言うけれど、私は寂しい。あなたと一緒ではないので。
鑑賞
巻第十八 4074

詞書は前の歌に続き「越前国の掾大伴宿禰池主の来贈せる歌三首」「物に属けて思ひを発す」
 桜は今が盛りだと人は言うが、あなたと一緒でないので私は寂しいと詠む。目の前の桜に寄せて、家持と離れている寂しさを述べた歌で、花の盛りと心の寂しさとの対比が印象的である。
 作者の大伴池主は大伴氏の一族で、家持が越中守であったころ越中の掾として仕え、家持と多くの歌や書簡を交わした。このときは越前国の掾に転じていた。
 家持はこの歌に本巻の第四千七十七首で答え、自分のところの桜はまだつぼみだから見に来てほしいと詠んでいる。

 初句「桜花」目の前の桜を歌い起こす。題詞の「物に属けて」は、この桜に寄せて思いを述べることを指す。
 二句「今ぞ盛りと」「ぞ」は強意の係助詞で、今こそ盛りだと人が言う言葉を示す。家持の返歌は「いまだ含めり」とこれを反転させ、盛りとつぼみの対照をなしている。
 三句「人は言へど」「ど」は逆接で、人は言うけれどもの意。世間の人と自分とを対比させる。
 四句「我れは寂しも」「寂し」は心が満たされず寂しいの意、「も」は詠嘆の終助詞である。ここで四句切れとなる。
 結句「君としあらねば」「し」は強意、「ねば」は打消しの已然形+ばで、あなたと一緒ではないのでの意となる。倒置の形で寂しさの理由を添えている。

さかり:盛り。花が最も美しく咲いている時
作者
大伴池主
出典
万葉集
前の歌
月見れば同じ国なり山こそば 君があたりを隔てたりけれ
次の歌
相思はずあるらむ君をあやしくも 嘆きわたるか人の問ふまで