三島野に霞たなびきしかすがに
昨日も今日も雪は降りつつ
- 歌の意味
-
三島野に霞がたなびいている。それなのに、昨日も今日も雪は降り続いている。
- 鑑賞
-
巻第十八 4079
詞書は前の歌に続き「越中国守大伴家持の報へ贈る歌四首」「更に矚目」
三島野には春の霞がたなびいているのに、昨日も今日も雪が降り続いていると、越中の晩春の景色を詠む。池主の三首に答えた後に、目の前の景色を加えて送ったもので、雪国越中の遅い春の様子を伝えている。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
左注に「三月十六日」とある。前歌の第四千七十七首で桜がまだつぼみだと詠んだことと、雪の降り続く景色とが響き合い、越中の春の遅さを伝えている。
初句「三島野に」三島野は越中国射水郡の野で、現在の富山県射水市のあたりとされる。
二句「霞たなびき」春のしるしである霞がたなびくさまをいう。
三句「しかすがに」そうはいうものの、それなのにの意で、上の句と下の句とを逆接でつないでいる。
四句「昨日も今日も」同じ形を重ねて、雪が何日も続くことを強調する。
結句「雪は降りつつ」「つつ」は継続を表し、言いさしの形で余情を残す。霞と雪という春と冬の景物を並べ、季節のせめぎ合いを描いている。
みしまの:越中国射水郡の野。現在の富山県射水市のあたり
たなびく:霞や雲が横に長く引く
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
恋ふといふはえも名付けたり言ふすべの たづきもなきは我が身なりけり
- 次の歌
-
常人の恋ふといふよりはあまりにて 我れは死ぬべくなりにたらずや