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常人の恋ふといふよりはあまりにて
我れは死ぬべくなりにたらずや

歌の意味
世間の人が恋しいと言う程度をはるかに越えて、私は死にそうになっているではないか。
鑑賞
巻第十八 4080

詞書「姑大伴氏坂上郎女の越中守大伴宿禰家持に来贈せる歌二首」
 世の常の人が恋しいと言うのを越えて、私は死にそうになっているではないかと詠む。都にいる坂上郎女が、越中の家持を恋しく思う心を、恋歌の型を借りて大げさに表した歌で、親しい身内ならではの親愛の情があふれている。
 作者の大伴坂上郎女は大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹にあたる。家持の叔母であり、娘の坂上大嬢が家持の妻となったので姑でもある。万葉集の女性歌人として多くの歌を残している。
 次歌とともに都から送られた歌で、家持は本巻の第四千八十二首以下の三首で答えている。

 初句「常人の」世の常の人、普通の人の意。自分の恋しさを普通の人と比べている。
 二句「恋ふといふよりは」普通の人が恋しいと言う程度よりは、の意。八音の字余りで、比較の基準を示す。
 三句「あまりにて」それを越えて、度を過ぎての意である。
 四句「我れは死ぬべく」「べく」は当然の助動詞で、死にそうなほどにの意。恋の苦しさを極端な言葉で表す。
 結句「なりにたらずや」「に」は完了、「たり」は存続、「ずや」は打消しの疑問で、なってしまっているではないかと強く訴える。家持の第四千八十二首は「生ける験あり」と、この「死ぬべく」に対して生きる甲斐で答えており、死と生が対をなしている。

つねひと:世の常の人。普通の人
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
三島野に霞たなびきしかすがに 昨日も今日も雪は降りつつ
次の歌
片思ひを馬にふつまに負ほせ持て 越辺に遣らば人かたはむかも