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天離る鄙の奴に天人し
かく恋すらば生ける験あり

歌の意味
都から遠く離れた田舎の下僕のような私に、天上の人のようなあなたがこれほど恋してくださるのなら、生きている甲斐があるというものだ。
鑑賞
巻第十八 4082

詞書「越中守大伴宿禰家持の報ふる歌并せて所心三首」
 都から遠い田舎の下僕である私に、天上の人のようなあなたがこれほど恋してくださるなら、生きている甲斐があると詠む。坂上郎女の第四千八十首に答えた歌で、自分を卑下し相手を高めることで、叔母の深い愛情への感謝を表している。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
 左注に「右、四日、使に附して京師に贈り上ぐ」とあり、四月四日に使いに託して都へ送られた。

 初句「天離る」鄙にかかる枕詞で、天のように遠く離れたの意である。三句の「天人」と「天」が響き合っている。
 二句「鄙の奴に」「鄙」は都から遠い田舎、「奴」は召使いの意。越中にいる自分をへりくだって言う。
 三句「天人し」「天人」は天上の人の意で、都にいる坂上郎女をたとえる。「し」は強意の副助詞である。田舎の「奴」と「天人」とが対比されている。
 四句「かく恋すらば」このように恋してくださるならばの意とされる。「すらば」の語法には諸説がある。
 結句「生ける験あり」「験」は甲斐の意で、生きている甲斐があるの意。郎女の「我れは死ぬべく」に対して、自分は生きる甲斐を得たと答え、死と生を対にしている。

ひな:都から遠く離れた田舎
やつこ:奴。召使い。へりくだって自分をいう
あめひと:天上の人
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
片思ひを馬にふつまに負ほせ持て 越辺に遣らば人かたはむかも
次の歌
常の恋いまだやまぬに都より 馬に恋来ば担ひあへむかも