紅はうつろふものぞ橡の
なれにし衣になほしかめやも
- 歌の意味
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紅色は色あせやすいものだ。橡で染めた着慣れた衣に、やはり及ぶことがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 4109
詞書は前の歌に続き「史生尾張少咋に教へ喩す歌一首[并せて短歌]」「反歌三首」
華やかな紅色はあせやすいものだ、地味でも着慣れた橡染めの衣に及ぶものではないと詠む。紅を遊行女婦の左夫流子に、橡を長年連れ添った本妻にたとえ、一時の華やかさより長年の情愛こそ大切だと諭している。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
左注に「右、五月十五日に、守大伴宿禰家持作る」とある。
初句「紅は」紅花で染めた鮮やかな赤色で、華やかな左夫流子をたとえている。
二句「うつろふものぞ」「うつろふ」は色があせる、心が変わる意、「ぞ」は強く言い切る終助詞である。ここで二句切れとなる。
三句「橡の」橡はクヌギの実で、それで染めた地味な色の衣をいう。身分の低い人の衣服の色で、本妻をたとえる。初句の「紅」と対比されている。
四句「なれにし衣に」「なる」は着慣れる、なじむ意で、長年連れ添った妻との関係を表している。
結句「なほしかめやも」「しく」は及ぶ、匹敵する意、「めやも」は反語で、やはり及ぶだろうか、いや及ばないの意となる。
つるはみ:橡。クヌギの実。またそれで染めた地味な色
うつろふ:色があせる。心が変わる
しく:及ぶ。匹敵する
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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里人の見る目恥づかし左夫流子に さどはす君が宮出後姿
- 次の歌
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左夫流子が斎きし殿に鈴懸けぬ 駅馬下れり里もとどろに