左夫流子が斎きし殿に鈴懸けぬ
駅馬下れり里もとどろに
- 歌の意味
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左夫流子が大事にかしずいていた屋敷に、鈴も懸けていない早馬が都から下ってきた。里中が鳴り響くほどに。
- 鑑賞
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巻第十八 4110
詞書「先の妻、夫君の喚ぶ使を待たずして自ら来る時に作る歌一首」
左夫流子が大切にお仕えしていた屋敷に、鈴も懸けない早馬が都から下ってきて、里中が大騒ぎになったと詠む。少咋の本妻が夫からの迎えの使いを待たずに自ら越中へやって来た騒動を、ユーモアをまじえて描いた歌で、前の教喩の歌群の後日談となっている。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
左注に「同じ月の十七日に、大伴宿禰家持作る」とあり、教喩の歌の二日後の作である。
初句「左夫流子が」前の反歌の第四千百八首の「左夫流子に」を受け、同じ女性を詠む。
二句「斎きし殿に」「斎く」は大切にかしずく、仕える意で、左夫流子が少咋をもてなしていた屋敷をいう。
三句「鈴懸けぬ」公用の駅馬は駅鈴を懸けるが、鈴を懸けないことから私用の馬であることがわかる。ここでは本妻の乗ってきた馬を指す。
四句「駅馬下れり」「駅馬」は早馬、「下る」は都から地方へ来る意である。ここで四句切れとなる。
結句「里もとどろに」里中が鳴り響くほどにの意で、妻の到来による騒ぎを誇張して描いている。本巻の第四千百八首の「里人の見る目恥づかし」の里人たちが、ここでは騒ぎの証人となっている。
いつく:大切にかしずく。仕える
はゆま:駅馬。官道の駅に置かれた早馬
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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紅はうつろふものぞ橡の なれにし衣になほしかめやも
- 次の歌
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橘は花にも実にも見つれども いや時じくになほし見が欲し