なでしこが花見るごとに娘子らが
笑まひのにほひ思ほゆるかも
- 歌の意味
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なでしこの花を見るたびに、乙女の笑顔のつややかな美しさが思われることだ。
- 鑑賞
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巻第十八 4114
詞書は前の歌に続き「庭中の花に作る歌一首[并せて短歌]」「反歌二首」
なでしこの花を見るたびに、乙女の笑顔の美しさが思い出されると詠む。越中に下って五年、独り寝の寂しさを庭に植えたなでしこと百合で慰めていると述べた長歌の反歌で、花の姿に都に残した妻の面影を重ねている。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
左注によれば、長歌と反歌は閏五月二十六日の作である。長歌では、なでしこを「花妻」と呼び、妻に寄せる思いを花に託している。
初句「なでしこが」長歌で詠まれた庭のなでしこを受けている。前歌の橘に続いて、ここでは庭の花としてなでしこが詠まれる。
二句「花見るごとに」花を見るたびに、の意で、繰り返し思い出されることを示す。
三句「娘子らが」「ら」は接尾語で、親しみをこめて乙女をいう。都に残した妻を思い浮かべているとみられる。
四句「笑まひのにほひ」「笑まひ」はほほえみ、「にほひ」はつややかな美しさの意。なでしこの花の色と乙女の笑顔とが重ねられている。
結句「思ほゆるかも」「思ほゆ」は自然に思われる意、「かも」は詠嘆である。次歌の第四千百十五首とともに、なでしこと百合という長歌の二つの花をそれぞれ詠み分けている。
ゑまひ:笑まひ。ほほえみ
にほひ:つややかな美しさ。色の照り映えること
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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橘は花にも実にも見つれども いや時じくになほし見が欲し
- 次の歌
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さ百合花ゆりも逢はむと下延ふる 心しなくは今日も経めやも