この見ゆる雲ほびこりてとの曇り
雨も降らぬか心足らひに
- 歌の意味
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いま見えているこの雲が広がって空一面に曇り、雨が降ってくれないものか。心が満ち足りるほどに。
- 鑑賞
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巻第十八 4123
詞書は前の歌に続き「天平感宝元年閏五月六日より以来、小旱を起こし、百姓の田畝稍く凋める色あり。六月朔日に至りて、忽ちに雨雲の気を見る。仍りて作る雲の歌一首[短歌一絶]」「反歌一首」
いま見えている雲が広がって空一面に曇り、心が満ち足りるほど雨が降ってほしいと詠む。閏五月から日照りが続いて田畑の作物がしおれかけていたところ、六月一日に雨雲の兆しが見えたので、雨を願って作った長歌の反歌である。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
左注に「右の二首は、六月一日の晩頭に、守大伴宿禰家持作る」とある。国守として民の暮らしを案じる心が表れた雨乞いの歌で、次歌の第四千百二十四首で雨が降った喜びが詠まれる。
初句「この見ゆる」いま目の前に見えている、の意で、詞書の「雨雲の気を見る」を受けている。
二句「雲ほびこりて」「ほびこる」は広がる、はびこるの意。雲が空に広がっていくさまを願う。
三句「との曇り」空一面に曇ること。長歌の結びの「との曇りあひて雨も賜はね」を受けている。
四句「雨も降らぬか」「ぬか」は打消しの疑問で、降ってくれないものかという願望を表す。ここで四句切れとなる。
結句「心足らひに」心が満ち足りるほどに、の意。倒置の形で、どれほど降ってほしいかを示す。長歌にも「しが願ふ心足らひに」という句が本巻の第四千九十四首に見え、民の心を満たすという同じ言葉が用いられている。
ほびこる:広がる。はびこる
とのぐもる:空一面に曇る
こころだらひ:心が満ち足りること
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝参の君が姿を見ず久に 鄙にし住めば我れ恋ひにけり
- 次の歌
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我が欲りし雨は降り来ぬかくしあらば 言挙げせずとも年は栄えむ