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我が欲りし雨は降り来ぬかくしあらば
言挙げせずとも年は栄えむ

歌の意味
私が願っていた雨は降ってきた。このようであれば、ことさらに言い立てて祈らなくても、今年の実りは豊かであろう。
鑑賞
巻第十八 4124

詞書「雨の落るを賀く歌一首」
 願っていた雨がついに降ってきた、このようであれば言挙げをしなくても今年の実りは豊かだろうと詠む。前の雲の歌で雨を願ってから三日後、雨が降ったことを喜んだ歌で、国守として豊作を確信する安堵と喜びがあふれている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
 左注に「右の一首は、同じ月の四日に大伴宿禰家持作る」とある。

 初句「我が欲りし」「欲る」は望む、願う意で、前の雲の歌で願った雨を指す。
 二句「雨は降り来ぬ」「ぬ」は完了の助動詞で、ついに降ってきたという喜びを表す。前歌の「雨も降らぬか」という願いが、ここで「降り来ぬ」と実現し、二首が願いとその成就として対をなしている。ここで二句切れとなる。
 三句「かくしあらば」「し」は強意で、このようであるならばの意となる。
 四句「言挙げせずとも」「言挙げ」は言葉に出してことさらに言い立てること。神に祈りを言い立てなくても、の意である。
 結句「年は栄えむ」「年」は穀物の実り、「む」は推量の助動詞で、今年の実りは豊かであろうと確信をもって結ぶ。

ことあげ:言挙げ。言葉に出してことさらに言い立てること
とし:年。穀物、とくに稲の実り
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
この見ゆる雲ほびこりてとの曇り 雨も降らぬか心足らひに
次の歌
天の川橋渡せらばその上ゆも い渡らさむを秋にあらずとも