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正月立つ春の初めにかくしつつ
相し笑みてば時じけめやも

歌の意味
正月を迎えた春の初めに、こうしてお互いに笑い合っていたならば、時節にそぐわないことなどあろうか。まことに時にかなったことである。
鑑賞
巻第十八 4137

詞書「判官久米朝臣広縄の舘にて宴する歌一首」
 正月を迎えた春の初めに、こうして互いに笑い合うのは、まことに時にかなった喜びだと詠む。掾の久米広縄の館で開かれた新年の宴の歌で、新春を迎えて親しい部下と笑い合う喜びを、祝いの言葉として述べている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされ、本巻は家持の越中時代の歌日誌の性格をもつ。
 左注に「同じ月の五日に、守大伴宿禰家持作る」とある。

 初句「正月立つ」「正月」は陰暦正月、「立つ」は月が始まる意で、新しい年が始まったことをいう。本巻の第四千六十六首の「卯の花の咲く月立ちぬ」と同じく、月の始まりを告げて歌い起こしている。
 二句「春の初めに」新年は春の初めでもあり、新春を迎える喜びを示す。
 三句「かくしつつ」「し」は強意、「つつ」は継続で、このようにしながらの意。宴の今を指している。
 四句「相し笑みてば」「し」は強意、「て」は完了の助動詞の未然形で、「ば」とともに、互いに笑い合ったならばの意となる。
 結句「時じけめやも」「時じ」は時節にそぐわない意、「めやも」は反語で、時節にそぐわないことがあろうか、いやまことに時にかなっているの意となる。

むつき:正月。陰暦一月
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山の木末のほよ取りて かざしつらくは千年寿くとぞ
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薮波の里に宿借り春雨に 隠りつつむと妹に告げつや