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もののふの八十娘子らが汲み乱ふ
寺井の上の堅香子の花

歌の意味
大勢の娘たちが入り乱れて水を汲む寺の井戸のほとりに咲いている、カタクリの花よ。
鑑賞
巻第十九 4143

詞書「堅香子草の花を攀ぢ折る歌一首」
 寺の井戸に大勢の娘たちが集まって賑やかに水を汲むかたわらに、カタクリの花がひっそりと咲いている光景を詠んだ歌である。娘たちの華やかな動きと、うつむいて咲く紫の可憐な花とが重なり合い、春の明るさに満ちている。
 堅香子(カタクリ)を詠んだ歌は万葉集中この一首のみで、越中の春の風物を伝える貴重な作として知られる。高岡市伏木には、この歌にちなむ歌碑や名所が伝えられている。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。

 初句「もののふの」は、朝廷に仕える官人の氏が多いことから「八十」にかかる枕詞である。
 二句「八十娘子らが」の「八十」は数の多いことをいい、大勢の若い娘たちが集まる華やかさを示す。
 三句「汲み乱ふ」は、入り乱れて水を汲むさまで、娘たちの動きの賑わいを描き出している。
 四句「寺井の上の」は、寺の境内の井戸のほとりをいい、「上」は井戸のそば、あたりの意である。
 結句「堅香子の花」は体言止めで、賑やかな人の動きから一転して、足もとに咲く花へと視線を集めて結んでいる。

もののふ:朝廷に仕える官人、その氏が多いことから「八十」にかかる枕詞となる
くみまがふ:入り乱れて水を汲む
てらゐ:寺の境内の井戸
かたかご:カタクリの古名
作者
大伴家持
出典
万葉集
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春の日に張れる柳を取り持ちて 見れば都の大道し思ほゆ
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