杉の野にさ躍る雉いちしろく
音にしも泣かむ隠り妻かも
- 歌の意味
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杉の生える野で跳ね躍って鳴く雉よ。人目にもはっきりと声をあげて泣くほどの、人に隠れて忍ぶ妻なのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十九 4148
詞書「暁に鳴く雉を聞く歌二首」
明け方の杉の野で、跳ね上がるようにして甲高く鳴く雉の声を聞き、それを人目を忍ぶ妻が思いをこらえきれずに声をあげて泣くさまになぞらえた歌である。雉は妻を恋うて鳴く鳥とされ、その声に恋の情趣を重ねている。
隠れて忍ぶはずの思いが、はっきりと声に出てしまうという対照が一首の眼目で、鳥の生態を恋の比喩に転じる巧みさが見られる。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「杉の野に」は、杉の生えている野を示し、明け方の山里の情景を設定している。
二句「さ躍る雉」の「さ」は接頭語で、「躍る」は跳ね上がる意。雉が羽ばたいて跳ね上がりながら鳴く姿をとらえている。
三句「いちしろく」は、はっきりと目立つさまをいい、隠れるはずのものがあらわになる対照を準備している。
四句「音にしも泣かむ」の「音」は泣き声、「し」「も」は強意で、声をあげて泣くことを強調している。
結句「隠り妻かも」の「隠り妻」は人目を忍ぶ妻のことで、「かも」は疑問と詠嘆を表す。雉を忍ぶ妻に見立てて結んでいる。
きぎし:雉の古名
をどる:跳ね上がる
ね:泣き声
こもりづま:人目を避けて家にこもっている妻、人に知られぬよう忍ぶ妻
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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夜くたちて鳴く川千鳥うべしこそ 昔の人も偲ひ来にけれ
- 次の歌
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あしひきの八つ峰の雉鳴き響む 朝明の霞見れば悲しも