あしひきの八つ峰の雉鳴き響む
朝明の霞見れば悲しも
- 歌の意味
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幾重にも重なる峰々で雉が鳴き声を響かせる、夜明けの霞を見ると、悲しくなる。
- 鑑賞
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巻第十九 4149
詞書は前の歌に続き「暁に鳴く雉を聞く歌二首」
幾重にも重なる峰々に雉の鳴き声が響きわたる夜明け、立ちこめる霞を眺めて悲しみを覚えた歌である。前歌が雉の声を恋の比喩としてとらえたのに対し、この歌では山全体に響く声と霞の情景から、理由の定かでない春の哀愁へと思いを広げている。
鳴き響く声という聴覚と、朝明けの霞という視覚が重なり、春の明け方の静かな寂しさがにじむ一首である。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「あしひきの」は、「山」や「峰」にかかる枕詞で、ここでは「八つ峰」を導いている。
二句「八つ峰の雉」の「八つ峰」は、幾重にも重なった峰々の意で、前歌の「杉の野」から視野を山全体へと広げている。
三句「鳴き響む」は、雉の声が山々に響きわたるさまをいい、連体形で下の「朝明」にかかる。
四句「朝明の霞」の「朝明」は夜明けの意で、声の響く空間を霞が包む情景へと転じている。
結句「見れば悲しも」の「も」は詠嘆の終助詞で、景を見ることから湧く悲しみを率直に表して結んでいる。
やつを:幾重にも重なった峰
なきとよむ:鳴き声を響かせる
あさけ:夜明け方、明け方
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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杉の野にさ躍る雉いちしろく 音にしも泣かむ隠り妻かも
- 次の歌
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朝床に聞けば遥けし射水川 朝漕ぎしつつ唄ふ舟人