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朝床に聞けば遥けし射水川
朝漕ぎしつつ唄ふ舟人

歌の意味
朝の寝床で聞くと、遥か遠くに聞こえてくる。射水川を朝漕ぎ上りながら唄う舟人の声が。
鑑賞
巻第十九 4150

詞書「遥かに江を泝る舟人の唱を聞く歌一首」
 朝の寝床の中で、射水川を漕ぎ上っていく舟人の唄声を遠く聞いた歌である。姿の見えない遠い声に耳を澄ます静けさの中に、越中の朝の大らかな風景が広がる。
 射水川は現在の小矢部川にあたり、越中国府のあった伏木の近くを流れて海に注いでいた。三月一日から続く一連の春の歌を、明るい朝の情景で締めくくる位置にある。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。

 初句「朝床に」は、朝の寝床でという場面を示し、作者が横になったまま耳を澄ましていることを表している。
 二句「聞けば遥けし」は、聞くと遥かに遠いの意で、ここで一首が切れる二句切れとなっている。
 三句「射水川」は、国府近くを流れる川の名を挙げ、遠い声の聞こえてくる場所を明らかにする。
 四句「朝漕ぎしつつ」は、朝の川を漕ぎ上りながらの意で、初句「朝床に」と「朝」の語を重ねて朝の情景を強めている。
 結句「唄ふ舟人」は体言止めで、二句の「遥けし」の主体を最後に明かす倒置的な構成となっている。

あさとこ:朝の寝床
ふなびと:舟を操る人、船頭
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
あしひきの八つ峰の雉鳴き響む 朝明の霞見れば悲しも
次の歌
今日のためと思ひて標しあしひきの 峰の上の桜かく咲きにけり