漢人も筏浮かべて遊ぶといふ
今日ぞ我が背子花かづらせな
- 歌の意味
-
唐の人も筏を浮かべて遊ぶという今日この日だ。わが友よ、花かずらを付けて楽しもうではないか。
- 鑑賞
-
巻第十九 4153
詞書は前の歌に続き「三日、守大伴宿祢家持の館にして宴する歌三首」
三月三日は唐の人々も筏を浮かべて遊ぶという日であるから、我々も花かずらを付けて楽しもうと、宴の客に呼びかけた歌である。中国の上巳の風俗を引き合いに出し、越中の宴を雅やかな節日の遊びになぞらえている。
中国では三月三日に水辺で禊を行い、曲水の宴を催す風習があり、この歌はそうした大陸の文化への関心と憧れを示している。宴の三首を締めくくる、晴れやかな誘いの歌である。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「漢人も」の「漢人」は中国の人をいい、「も」によって、唐の人も我々もという並列の意識を示している。
二句「筏浮かべて」は、上巳の日に水に筏を浮かべて遊ぶ中国の風習を描いている。
三句「遊ぶといふ」は伝聞の形で、異国の風俗を聞き知ったものとして示している。
四句「今日ぞ我が背子」の「ぞ」は強意の係助詞で、まさに今日なのだと強調し、ここで意味が切れる。続く「我が背子」は宴の友への呼びかけである。
結句「花かづらせな」の「な」は自分たちの意志や勧誘を表す終助詞で、花かずらをつけようと誘って結んでいる。
からひと:中国の人
はなかづら:花を連ねて髪に飾るかずら
せこ:親しい男性への呼びかけ
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
奥山の八つ峰の椿つばらかに 今日は暮らさね大夫の伴
- 次の歌
-
矢形尾の真白の鷹を宿に据ゑ 掻き撫で見つつ飼はくしよしも