妹が袖我れ枕かむ川の瀬に
霧立ちわたれさ夜更けぬとに
- 歌の意味
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妻の袖を私は枕にして寝よう。天の川の瀬に霧よ立ちこめてくれ、夜が更けないうちに。
- 鑑賞
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巻第十九 4163
詞書「予め作る七夕の歌一首」
七夕の夜に彦星が織女に逢う場面を、彦星の立場で詠んだ歌である。妻の袖を枕に寝ようと願い、夜が更けないうちに天の川に霧が立ちこめて、人目から逢瀬を隠してほしいと詠んでいる。
詞書に「予め作る」とあるように、三月のうちに七月の七夕の歌を前もって作ったもので、季節に先んじて歌を用意する家持の作歌姿勢がうかがえる。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「妹が袖」は、恋しい妻である織女の袖を示し、逢瀬への期待を冒頭に掲げている。
二句「我れ枕かむ」の「枕く」は枕にする意で、「む」の意志によって妻と共寝しようとする彦星の思いを表し、ここで切れる二句切れとなっている。
三句「川の瀬に」は、天の川の瀬をいい、二人を隔てる川で逢瀬の場となる場所を示している。
四句「霧立ちわたれ」は命令形で、霧に一面に立ちこめよと呼びかけ、逢瀬を覆い隠してほしいという願いを示している。
結句「さ夜更けぬとに」の「とに」は「〜うちに」の意で、夜が更けないうちにと時を急ぐ心を表している。
まく:枕にする、共寝する
いも:男性から親しい女性や妻を呼ぶ語
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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うつせみの常なき見れば世の中に 心つけずて思ふ日ぞ多き
- 次の歌
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大夫は名をし立つべし後の世に 聞き継ぐ人も語り継ぐがね