山吹を宿に植ゑては見るごとに
思ひはやまず恋こそまされ
- 歌の意味
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山吹を庭に植えてからは、見るたびに物思いはやまず、恋しさがいっそう募るばかりだ。
- 鑑賞
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巻第十九 4186
詞書は前の歌に続き「山振の花を詠む歌一首并せて短歌」
山吹の花を詠んだ長歌の反歌で、心を慰めようと山吹を庭に植えたのに、見るたびに物思いはやまず、かえって恋しさが募るばかりだと詠んでいる。長歌で、恋の思いが繁いので心をなごませようと谷辺の山吹を庭に移し植えたと述べたのを受け、慰めがかえって思いを強める逆説を示している。
前歌の都からの山吹の歌に続いて配されており、山吹を介して都と越中の間で思慕が交わされている。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「山吹を」は、前歌と同じ山吹の花を冒頭に置き、二首を響き合わせている。
二句「宿に植ゑては」は、庭に植えてからはの意で、長歌の「宿に引き植ゑて」を受けている。
三句「見るごとに」は、見るたびにの意で、繰り返し花を見る行為を示し、長歌の「見るごとに」と同じ句である。
四句「思ひはやまず」は、長歌の結びと同じ句で、物思いが絶えないことを示している。
結句「恋こそまされ」の「こそ」は係助詞で、已然形「まされ」と係り結びをなし、恋しさが募るばかりだと強調して結んでいる。
やど:家、家の庭先
まさる:いっそう強くなる、募る
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山吹の花取り持ちてつれもなく 離れにし妹を偲ひつるかも
- 次の歌
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藤波の花の盛りにかくしこそ 浦漕ぎ廻つつ年に偲はめ