古典和歌stream

皇祖の遠御代御代はい重き折り
酒飲みきといふぞこのほほがしは

歌の意味
遠い昔の天皇の御代御代には、これを重ねて折り曲げて、酒を飲んだというよ、このホオノキの葉は。
鑑賞
巻第十九 4205

詞書は前の歌に続き「攀ぢ折れる保宝葉を見る歌二首」
 前歌で恵行が葉を青い絹傘に見立てたのに答え、このホオノキの葉は、遠い昔の天皇の御代には重ねて折り曲げ、酒を飲む器にしたと伝えられていると、その由緒を語った歌である。
 葉を器として用いた古い風習を引き合いに出し、身近な葉に古代の宮廷の由緒を見出している。左注に「守大伴宿祢家持」とある。結句は字余りである。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。

 初句「皇祖の」の「皇祖」は代々の天皇の意で、時を遠い昔へとさかのぼらせている。
 二句「遠御代御代は」は、遠い昔の御代御代にはの意で、「御代」を重ねて長い時の流れを表している。
 三句「い重き折り」の「い」は接頭語、「重く」は重ねる意で、葉を重ねて折り曲げ器とするさまを示している。
 四句「酒飲みきといふぞ」の「酒」は酒の古語、「き」は過去、「ぞ」は強意で、伝承として語り伝えられていることを強調している。
 結句「このほほがしは」は字余りで、前歌の三句と同じ「ほほがしは」で結び、二首を対応させている。

すめろき:皇祖、代々の天皇
き:酒の古語
しく:重ねる
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
我が背子が捧げて持てるほほがしは あたかも似るか青き蓋
次の歌
渋谿をさして我が行くこの浜に 月夜飽きてむ馬しまし止め