渋谿をさして我が行くこの浜に
月夜飽きてむ馬しまし止め
- 歌の意味
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渋谿をめざして私が行くこの浜で、月夜を心ゆくまで眺めよう。馬をしばらく止めよ。
- 鑑賞
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巻第十九 4206
詞書「還る時に浜の上にて月の光を仰ぎ見る歌一首」
布勢の水海への遊覧から帰る途中、渋谿へ向かう浜辺で月の光を仰ぎ見て、この浜で月夜を心ゆくまで眺めよう、馬をしばらく止めよと詠んだ歌である。昼の藤の遊覧に続き、帰路の月夜の美しさに心ひかれ、名残を惜しむ思いが表れている。
渋谿は現在の高岡市太田の雨晴海岸一帯とされ、家持が愛した景勝地である。左注に「守大伴宿祢家持」とある。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「渋谿を」は、帰路の目的地である渋谿の地名を冒頭に置いている。
二句「さして我が行く」は、めざして私が行くの意で、帰途にある自身を示している。
三句「この浜に」は、月光を仰ぐ浜辺を示し、いまいる場所を限定している。
四句「月夜飽きてむ」の「月夜」は月の照る夜、「飽く」は満ち足りる意、「てむ」は強い意志で、心ゆくまで月を眺めようとしている。
結句「馬しまし止め」の「しまし」はしばらくの意、「止め」は命令形で、従者に馬を止めさせて名残を惜しむ心を表して結んでいる。
つくよ:月、月の照る夜
あく:満ち足りる
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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皇祖の遠御代御代はい重き折り 酒飲みきといふぞこのほほがしは
- 次の歌
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我がここだ待てど来鳴かぬ霍公鳥 ひとり聞きつつ告げぬ君かも