東風をいたみ奈呉の浦廻に寄する波
いや千重しきに恋ひわたるかも
- 歌の意味
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東風が激しく吹くので奈呉の浦に寄せる波が幾重にも重なるように、ますます幾重にも重ねて恋い続けていることだ。
- 鑑賞
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巻第十九 4213
詞書はなく、左注に「右の一首は、京の丹比の家に贈る」とある
都の丹比の家に贈った歌で、東風が激しく吹いて奈呉の浦に幾重にも波が寄せるように、ますます思いを重ねて恋い続けていると詠んでいる。越中の海の景を序として用い、遠く離れた都の人への尽きない思いを表している。
「あゆ」は越中の方言で東風をいい、巻第十七の第四千十七首の原注に「越の俗語に東風を安由乃可是と謂ふ」と記されている。土地の言葉を取り入れて越中の風土を歌に映している。奈呉の浦は現在の富山県射水市放生津潟のあたりとされる。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「東風をいたみ」の「東風」は越中の方言で東風をいい、「〜を〜み」は原因を表して、東風が激しいのでの意となる。
二句「奈呉の浦廻に」の「浦廻」は入り江の湾曲したあたりで、越中の海辺を示している。
三句「寄する波」までが、波が幾重にも寄せることから四句の「千重しきに」を導く序詞である。
四句「いや千重しきに」の「いや」はますます、「千重しきに」は幾重にも重ねての意で、波の重なりと思いの重なりを掛け合わせている。
結句「恋ひわたるかも」の「恋ひわたる」は恋い続ける意、「かも」は詠嘆で、尽きない思慕を表して結んでいる。
あゆ:東風を指す越中の方言
うらみ:入り江の湾曲したあたり
こひわたる:恋い続ける
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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娘子らが後の標と黄楊小櫛 生ひ変り生ひて靡きけらしも
- 次の歌
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遠音にも君が嘆くと聞きつれば 哭のみし泣かゆ相思ふ我れは