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卯の花を腐す長雨の始水に
寄る木屑なす寄らむ子もがも

歌の意味
卯の花を腐らせる長雨で増した水の流れの先に寄って来る木くずのように、私に寄り添ってくれる娘がいればいいのに。
鑑賞
巻第十九 4217

詞書「霖雨の晴るる日に作る歌一首」
 長雨が晴れた日に詠んだ歌で、卯の花を腐らせるほどの長雨で増した水の先に木くずが寄ってくるように、自分に寄り添ってくれる娘がいればよいのにと詠んでいる。長雨の鬱屈した気分を晴らすように、戯れめいた恋の願望を述べている。
 増水の先端に流れ寄る木くずという素朴な景物を比喩に用いた点に独自性があり、越中の梅雨の実感がこもっている。左注に「右の二首は五月」とある。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。

 初句「卯の花を」は、初夏に白い花を咲かせる卯の花を示し、季節を定めている。
 二句「腐す長雨の」の「腐す」は腐らせる意で、花を腐らせるほどの長雨の激しさを表している。
 三句「始水に」は、増水した水の流れの先端、出水のはじめをいう。
 四句「寄る木屑なす」の「木屑」は木くずやごみの意、「なす」は〜のようにの意で、初句からここまでが「寄る」を軸に結句を導く比喩となっている。
 結句「寄らむ子もがも」の「もがも」は願望を表し、寄り添ってくれる娘がいてほしいと、四句の「寄る」を繰り返して結んでいる。

くたす:腐らせる
ながめ:長雨
みづはな:増水した水の流れの先端、出水のはじめ
こつみ:木くず、ごみ
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
世間の常なきことは知るらむを 心尽くすな大夫にして
次の歌
鮪突くと海人の灯せる漁り火の 秀にか出ださむ我が下思ひを