鮪突くと海人の灯せる漁り火の
秀にか出ださむ我が下思ひを
- 歌の意味
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マグロを突こうと漁師がともしている漁り火のように、表にはっきりと出してしまおうか、私の胸に秘めた思いを。
- 鑑賞
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巻第十九 4218
詞書「漁夫の火光を見る歌一首」
夜の海に漁師がともす漁り火を見て、その火のように、胸に秘めた恋の思いを表にはっきり出してしまおうかと詠んだ歌である。暗い海に赤々と目立つ漁り火を、抑えきれない恋心の比喩としている。
越中の海辺の夜の生活の景をとらえつつ、それを恋の歌へと転じた点に工夫がある。前歌と同じく五月の作で、左注に「右の二首は五月」とある。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「鮪突くと」の「鮪」はマグロの古名で、銛で突いて捕る漁のさまを示している。
二句「海人の灯せる」は、漁師がともしているの意で、夜の漁の情景を描いている。
三句「漁り火の」までが、漁り火が目立つことから四句の「秀に」を導く序詞である。
四句「秀にか出ださむ」の「秀」は表面に目立って現れることで、「か」と「む」の係り結びにより、表に出してしまおうかとためらう心を表している。
結句「我が下思ひを」の「下思ひ」は心の内に秘めた思いで、倒置によって出すべきものを最後に示して結んでいる。
しび:マグロの古名
いさりび:夜、魚を寄せるために船上でたく火
ほ:目立つもの、表面にはっきり現れること
したもひ:心の内に秘めた思い
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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卯の花を腐す長雨の始水に 寄る木屑なす寄らむ子もがも
- 次の歌
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我が宿の萩咲きにけり秋風の 吹かむを待たばいと遠みかも