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あをによし奈良人見むと我が背子が
標けむ黄葉地に落ちめやも

歌の意味
奈良の人に見せようと、あなたが目印をつけておいた紅葉が、地に散り落ちることがあろうか、いや、ありはしない。
鑑賞
巻第十九 4223

詞書は前の歌に続き「九月三日の宴の歌二首」
 前歌の広縄の歌に応じたもので、奈良の人(広縄の妻)に見せようとあなたが目印をつけておいた紅葉が、地に落ちることなどあろうかと詠み、時雨を案じる広縄を安心させている。
 広縄の「我妹子」を「奈良人」と言い換えて、都の妻への思いを汲み取りながら励ます、宴の席らしい心配りのある唱和である。左注に「右の一首は、守大伴宿祢家持作る」とある。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。

 初句「あをによし」は「奈良」にかかる枕詞である。
 二句「奈良人見むと」の「奈良人」は奈良の都の人で、前歌の「我妹子」を言い換え、広縄の妻を指している。
 三句「我が背子が」は、親しい男性である広縄を指している。
 四句「標けむ黄葉」の「標く」は目印をつける意、「けむ」は過去推量で、広縄が目をつけておいたであろう紅葉を示し、前歌の「黄葉取りてむ」を受けている。
 結句「地に落ちめやも」は字余りで、「やも」は反語を表し、地に落ちることなどないと強く打ち消して結んでいる。

しむ:目印をつける、自分のものとする
ならひと:奈良の都の人
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
このしぐれいたくな降りそ我妹子に 見せむがために黄葉取りてむ
次の歌
朝霧のたなびく田居に鳴く雁を 留め得むかも我が宿の萩