うち羽振き鶏は鳴くともかくばかり
降り敷く雪に君いまさめやも
- 歌の意味
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羽ばたいて鶏が鳴いたとしても、これほど降り積もった雪の中を、あなたがお帰りになることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十九 4233
詞書「ここに諸人酒酣にして、更深けて鶏鳴く。これによりて主人内蔵伊美吉縄麻呂の作る歌一首」
宴が盛り上がって夜も更け、鶏が鳴いたのを受けて、主人の縄麻呂が客を引き留めた歌である。たとえ鶏が鳴いて夜明けを告げても、これほど雪が降り積もっているのだから、お帰りになることなどないでしょうと、名残を惜しむ主人の心を示している。
鶏の声は本来、男女の別れの時を告げるものとして詠まれることが多く、その趣向を宴の客を留める挨拶に転じている。次歌で家持がこれに和している。
作者の内蔵縄麻呂は、越中国の介(国司の次官)として国守の家持を補佐した官人である。
初句「うち羽振き」の「うち」は接頭語、「羽振く」は羽ばたく意で、鶏が鳴く前の羽ばたきを描いている。
二句「鶏は鳴くとも」の「とも」は逆接仮定で、鶏が鳴いて夜明けを告げたとしてもの意である。
三句「かくばかり」は、これほどまでにの意で、雪の深さを強調している。
四句「降り敷く雪に」は、一面に降り積もった雪の中にの意で、帰り道の困難を示している。
結句「君いまさめやも」の「います」は「行く」の尊敬語、「やも」は反語で、お帰りになることなどあろうかと引き留めて結んでいる。
はぶく:羽ばたく
います:「行く」「来」の尊敬語、おいでになる
- 作者
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内蔵縄麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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雪の嶋巌に植ゑたるなでしこは 千代に咲かぬか君がかざしに
- 次の歌
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鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の 千重に積めこそ我が立ちかてね