石瀬野に秋萩しのぎ馬並めて
初鷹猟だにせずや別れむ
- 歌の意味
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石瀬野で秋萩を押し分けて馬を並べ、その年初めての鷹狩りさえもしないまま、別れることになるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十九 4249
詞書は前の歌に続き「七月十七日を以ちて少納言に遷任す。よりて悲別の歌を作り、朝集使掾久米朝臣広縄の館に贈り貽す二首 / すでに六載の期に満ち、たちまちに遷替の運に値ふ。ここに旧きに別るる悽しみ、心中に鬱結し、渧を拭ふ袖、何を以ちてか能く旱さむ。よりて悲歌二首を作り、式ちて莫忘の志を遺す。その詞に曰く」
広縄に残した別れの歌の二首目で、石瀬野で秋萩を押し分けながら馬を並べ、その年初めての鷹狩りをすることさえしないまま別れることになるのかと嘆いている。鷹狩りを好んだ家持が、広縄とともに楽しみにしていた秋の初鷹狩りができない無念を述べている。
石瀬野は家持が鷹狩りを楽しんだ越中の野である。左注に「右、八月四日に贈る」とある。越中守として足かけ六年を過ごした家持が少納言に任じられて都へ帰ることになり、朝集使として都へ上っていて不在の久米広縄の館に別れの歌を残したものである。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平十八年(746)から越中守として越中国府(現在の富山県高岡市伏木)に赴任していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる奈良時代を代表する歌人である。
初句「石瀬野に」は、鷹狩りの場であった越中の石瀬野を示している。
二句「秋萩しのぎ」の「しのぐ」は押し伏せる、押し分ける意で、秋萩の茂る野を馬で分けて進むさまを描いている。
三句「馬並めて」の「並む」は並べる意で、友と馬を並べて狩りに出る情景を示している。
四句「初鷹猟だに」の「初鷹猟」はその年初めての鷹狩り、「だに」は〜さえの意で、せめてそれだけでもという思いを示している。
結句「せずや別れむ」の「や」は疑問で、連体形「む」と係り結びをなし、しないまま別れるのかと無念を込めて結んでいる。
しのぐ:押し伏せる、押し分ける
はつとがり:その年初めての鷹狩り
なむ:並べる
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あらたまの年の緒長く相見てし その心引き忘らえめやも
- 次の歌
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しなざかる越に五年住み住みて 立ち別れまく惜しき宵かも