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君が家に植ゑたる萩の初花を
折りてかざさな旅別るどち

歌の意味
あなたの家に植えた萩の初花を折って髪に挿そう。旅の途中で別れて行く者同士で。
鑑賞
巻第十九 4252

詞書「正税帳使掾久米朝臣広縄、事畢りて任に退る。適越前国の掾大伴宿祢池主の館に遇ひ、よりて共に飲楽す。時に久米朝臣広縄、萩の花を矚て作る歌一首」
 都での用務を終えて越中へ戻る途中の久米広縄が、都へ上る家持と、越前の大伴池主の館で偶然出会い、ともに酒宴を楽しんだ折の歌である。池主の家に植えた萩の初花を折って髪に挿そう、旅の途中で別れて行く者同士でと、三人の再会と別れを詠んでいる。
 かつて越中でともに歌を交わした三人が、越前で思いがけず顔を合わせた喜びと、すぐにまた別れねばならない寂しさとが、萩の初花に託されている。
 作者の久米広縄は、越中国の掾(国司の第三等官で、判官とも記される)として家持の下で仕えた官人で、家持と歌のやりとりを重ねた人物である。

 初句「君が家に」は字余りで、「君」は館の主人である池主を指している。
 二句「植ゑたる萩の」は、池主の家の庭に植えられた萩を示している。
 三句「初花を」の「初花」はその年初めて咲いた花で、秋の訪れと出会いの新鮮さを重ねている。
 四句「折りてかざさな」の「かざす」は髪に挿す意、「な」は勧誘を表し、ともに髪に飾ろうと誘っている。
 結句「旅別るどち」の「どち」は仲間、同士の意で、旅の途中で別れる者同士と、再会と別れの境遇を示して結んでいる。

はつはな:その年初めて咲いた花
かざす:髪や冠に花や枝を挿す
どち:仲間、同士
作者
久米広縄
出典
万葉集
前の歌
玉桙の道に出で立ち行く我れは 君が事跡を負ひてし行かむ
次の歌
立ちて居て待てど待ちかね出でて来し 君にここに逢ひかざしつる萩