- 歌の意味
-
秋の花はさまざまにあるけれど、その色ごとに天皇が御覧になって御心を晴らされる今日の、なんと貴いことか。
- 鑑賞
-
巻第十九 4255
詞書は前の歌に続き「京に向かふ路の上にして興に依りて預め作る侍宴応詔の歌一首并せて短歌」反歌一首
都へ向かう旅の途上で、帰京後に天皇の宴に侍って詔に応えて歌を奉る場合に備え、興にまかせて前もって作った長歌の反歌である。秋の花はさまざまにあるが、その色の一つひとつを天皇が御覧になって御心を晴らされる今日の宴の貴さを讃えている。
長歌で天皇の治世を讃え、秋の花を愛でて酒宴に栄える今日の貴さを述べたのを受けている。実際の宴を想定して歌をあらかじめ用意しておく、宮廷歌人としての家持の心構えがうかがえる。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、五年あまり越中守を務めたのち、天平勝宝三年(751)に少納言に任じられ、都へ上る途上にあった。万葉集の編纂に深く関わったとされる歌人である。
初句「秋の花」は、秋に咲くさまざまな花を示し、宴の景物としている。
二句「種にあれど」の「種」はさまざま、いろいろの意で、逆接の「ど」で下へ続けている。この句は字余りである。
三句「色ごとに」は、花のそれぞれの色ごとにの意で、天皇が一つひとつ愛でるさまを示している。
四句「見し明らむる」の「見す」は「見る」の尊敬語、「明らむ」は心を晴らす意で、天皇が御覧になって御心を晴らされることを表している。
結句「今日の貴さ」は体言止めで、宴の日の貴さを讃えて結び、長歌の結び「あやに貴さ」と響き合っている。
めす:御覧になる、「見る」の尊敬語
あきらむ:心を晴らす
くさぐさ:さまざま、いろいろ
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
立ちて居て待てど待ちかね出でて来し 君にここに逢ひかざしつる萩
- 次の歌
-
いにしへに君が三代経て仕へけり 我が大主は七代申さね