葎延ふ賎しき宿も大君の
座さむと知らば玉敷かましを
- 歌の意味
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雑草のはびこるみすぼらしい我が家も、上皇がお出ましになると知っていたならば、玉を敷きつめておいたものを。
- 鑑賞
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巻第十九 4270
詞書は前の歌に続き「十一月八日、左大臣橘朝臣の宅に在して肆宴したまふ歌四首」
前歌の太上天皇の御歌に答えた主人橘諸兄の歌で、雑草のはびこるみすぼらしい我が家も、上皇がお越しになると知っていたら、玉を敷きつめてお迎えしたものをと、謙遜しつつ行幸への感謝を述べている。
自邸をへりくだって「葎延ふ賎しき宿」と言い、身に余る光栄への恐縮を表した、宴の主人としての挨拶である。左注に「右の一首は、左大臣橘卿」とある。
作者の橘諸兄は、美努王と県犬養三千代の子で、もと葛城王といい、臣籍に降って橘の姓を名乗った。左大臣として聖武朝の政治を主導し、大伴家持とも親しかった。
初句「葎延ふ」の「葎」はつる草などの雑草で、荒れた家を表す謙遜の表現である。
二句「賎しき宿も」は、みすぼらしい我が家もの意で、自邸をへりくだって述べている。
三句「大君の」は、行幸した太上天皇を指している。
四句「座さむと知らば」の「座す」は「あり」「居り」の尊敬語で、お出ましになると知っていたならばの意となる。
結句「玉敷かましを」の「まし」は反実仮想、「を」は詠嘆を含む逆接で、玉を敷いてお迎えしたものをと結んでいる。
むぐら:つる草などの雑草
ます:「あり」「居り」の尊敬語、いらっしゃる
- 作者
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橘諸兄
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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よそのみに見ればありしを今日見ては 年に忘れず思ほえむかも
- 次の歌
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松蔭の清き浜辺に玉敷かば 君来まさむか清き浜辺に