あしひきの山下ひかげかづらける
上にやさらに梅をしのはむ
- 歌の意味
-
山の下陰に生えるひかげのかずらを髪飾りにしているうえに、さらに梅を賞でようというのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十九 4278
詞書は前の歌に続き「二十五日、新嘗会の肆宴にして詔に応ふる歌六首」
新嘗祭の肆宴での六首目で、前歌の永手の梅見の誘いに応え、新嘗祭の髪飾りとしてひかげのかずらをつけているうえに、さらに梅まで賞でようというのかと、戯れめかして答えている。
ひかげのかずらは新嘗祭などの神事で髪飾りとした植物で、今日の祭儀の装いに春の梅を重ねる贅沢を興じている。左注に「右の一首は、少納言大伴宿祢家持」とあり、六首の唱和を締めくくっている。
作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平勝宝三年(751)に少納言に任じられて越中から平城京に戻り、都の官人として宮廷の宴にも列していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる歌人である。
初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞である。
二句「山下ひかげ」は、山の下陰に生えるひかげのかずらを示している。
三句「かづらける」の「かづらく」は髪飾りにする意で、新嘗祭の装いを示している。
四句「上にやさらに」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「む」と係り結びをなし、そのうえさらにと問いかけている。
結句「梅をしのはむ」の「しのふ」は賞美する意で、前歌の梅の花を受けて結んでいる。
ひかげ:ヒカゲノカズラ、新嘗祭などの神事で髪飾りにした植物
かづらく:髪飾りにする
しのふ:賞美する、愛でる
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
袖垂れていざ我が園に鴬の 木伝ひ散らす梅の花見に
- 次の歌
-
能登川の後には逢はむしましくも 別るといへば悲しくもあるか